結婚
1990年、20代前半のアイドル同士であった薬丸裕英と石川秀美が結婚を発表した。結婚&妊娠を発表した際は、石川はすでに妊娠8ヶ月をむかえており、事態がそこまで明白になるまで、周囲としても、おそらく本人たちとしても、公表できない心情であったことが伺える。また、報告はマスコミ各社へのファクシミリによる通知文書送付のみで、石川が姿を見せることは一切なく、テレビや雑誌などでも非常にスキャンダラスに扱われ、世間も眉をひそめる雰囲気があった。当時、このような事態はまだまだ重大かつ深刻であり、「できちゃった」という軽い言葉が一般的に使われることは無かった。
1997年、安室奈美恵が、妊娠3ヶ月でTRFのSAMとの結婚を発表した。安室が当時まだ20歳になったばかりであったことや、人気絶頂期であったこと、その上まだ後ろめたさのぬぐえなかった婚前妊娠の事実を、にこやかに堂々と記者会見で発表したことは、世間に衝撃を与え、大きな話題となり、祝福ムードが沸き起こった。それから徐々に「できちゃった結婚」という言葉が日常的になっていった。
1990年当時には「アイドルでもセックスするのか」という感想が聞かれるなど、世間はショックを受けていた。それからわずか7年後の社会の姿は、隔世の感があった。この期間、日本社会には性に対する様々な大きな変化が起きており、婚前交渉や避妊に対する考え方や、10代のセックスに対する考え方も、少しのきっかけさえあれば、大きく変容する素地を備えていたと考えられる。
安室の発表をきっかけのようにして、世間でも、若くして妊娠→結婚という道をたどるカップルが目立つようになった。あるいは、それまでは人目をはばかって表沙汰にされなかったそのようなカップルが、堂々と振舞えるような風潮に変わってきたとも言える。
有名人のできちゃった結婚のニュースは次々と聞かれるようになり、有名人が結婚を発表する際は、新婦が妊娠しているのかどうかを確認するのが当たり前のようになった。妊娠を伴わない結婚の場合には、記事や報道に「妊娠はしていない」と付け加えられることが多い。
一方で、その安室とSAMを始めとして、できちゃった結婚をした芸能人が数年で離婚したというニュースも多く、スキャンダルとして取り上げられるために、「できちゃった結婚は長続きしない」というイメージも大きい。できちゃった結婚のカップルには、相対的に10代後半〜20代前半の若年層が多いことや、「結婚を前提とした交際ではなかったが、子供が出来てしまったので、やむを得ず結婚を選んだ」というケースも少なくないことが、早期離婚の原因の一つであると考えられる。しかし、できちゃった結婚であっても、前述の薬丸裕英・石川秀美夫妻や、CHARA・浅野忠信夫妻等、年月を経てなお円満な夫婦は少なくない。
芸能界などでは、30代後半〜40代のできちゃった結婚の話題も多く聞かれるようになってきた。十分に自立して生活している女性が、結婚を選ばずに恋愛関係を続け、その結果妊娠して初めて結婚を考えるというケースである。初産年齢が高くなっていることもあり、「できちゃって」初めて結婚を考える女性が増えている傾向は、一般社会にも当てはまる。